憲法記念日:映画「靖国」が東京・渋谷で封切り、すぐ満席に 厳重警備、混乱なし

 憲法記念日の3日、右翼団体の抗議などで上映中止が相次いだドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓(りいん)監督)が、東京都渋谷区の映画館で全国に先駆けて封切られた。物々しい警備の中、会場は大きな混乱もないまま、すぐに満席となり、関心の高さをうかがわせた。各地では護憲、改憲派の集会も開かれ、憲法で保障される「表現の自由」や「平和」を考える一日となった。【大場弘行、山本太一】

 ◇8回の上映、850人が鑑賞

 渋谷区の映画館「渋谷シネ・アミューズ」では、警察車両を館正面に横付けし、警察官らが出入り口や館内で目を光らせる中、早朝から100人近い人が並んだ。8回の上映で約850人が鑑賞した。

 詰めかけた報道陣に「(中国側に)偏った報道が多い」と批判する客もいたが、映画の内容には肯定的な声が目立った。戦死した友人2人をまつる靖国神社に毎年参拝している神奈川県相模原市、無職、安住重則さん(74)は「映画はいろんな立場の人の声をバランスよく盛り込んでいた。上映を中止にする必要はなかった」と話した。

 靖国神社が映画制作会社に映像の削除や訂正を要求しているが、映画は今後予定通り全国各地で上映され、上映を希望する映画館も増えているという。

 ◇護憲・改憲両派が集会

 東京都千代田区であった護憲派による「5・3憲法集会」には、約4300人(主催者発表)が集まった。元米軍大佐の平和運動家、メアリー・アン・ライトさんが「アメリカはイラクに侵略戦争をしている。自衛隊に協力しないよう呼びかけてほしい」と訴えた。その後、JR東京駅付近まで約2キロの道を「9条を守ろう」などと声を上げ行進した。

 改憲派の集会「新しい憲法をつくる国民大会」は新宿区で開かれ、約500人(同)が参加した。航空自衛隊のイラクでの活動の一部を違憲とした名古屋高裁判決や、「憲法改正を担うはずの衆参両院憲法審査会が『開店休業』」と現状を嘆く意見も出た。自民党憲法審議会の船田元会長代理は「改憲を求める声があるのに、国会で議論されないことを我々は恥じなければならない」と述べた。

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 ◇「靖国 YASUKUNI」上映日程
上映開始日      場所
5月 3日(〜9日) 東京都渋谷区 渋谷シネ・アミューズ
  10日      千代田区   シネカノン有楽町1丁目
  10日      大阪市淀川区 第七芸術劇場
  24日      広島市中区  広島シネツイン新天地
6月 7日      京都市下京区 京都シネマ
  同        新潟市中央区 シネ・ウインド
7月12日      群馬県高崎市 シネマテークたかさき
  同        那覇市    桜坂劇場

 ◇今後、上映を予定する主な映画館
 北海道帯広市=CINEとかちプリンス劇場▽同苫小牧市=シネマ・トーラス▽同函館市=シネマアイリス▽青森県八戸市=八戸フォーラム▽盛岡市=盛岡フォーラム▽岩手県一関市=一関シネプラザ▽山形市=山形フォーラム▽福島市=福島フォーラム▽東京都渋谷区=シネマ・アンジェリカ▽新潟県十日町市=十日町シネマパラダイス▽福井市=メトロ劇場▽山口県周南市=テアトル徳山▽高知市=あたご劇場▽福岡市=シネテリエ天神▽宮崎市=宮崎キネマ館
*映画館名や日程は、映画配給協力・宣伝会社「アルゴ・ピクチャーズ」調べ

(毎日新聞 2008年5月4日 東京朝刊)


映画「靖国」が公開=抗議行動なく満席で−東京・渋谷

 賛否両論が集まっているドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)が、「憲法記念日」の3日午前、東京・渋谷のシネ・アミューズで全国に先駆けて公開された。2つのスクリーン(計214席)を使い、毎日4回上映するが、初回は午前9時前には観客が列を作り、すぐに満席になった。

 周囲は右翼団体の抗議行動などもなく、平穏な中で上映開始。終映後、会社員の花田信一郎さん(47)は「左右どちらの立場でもそれなりに考えられる作品」と印象を語った。また、大学生の田中善之さん(22)は「なぜこの映画で自主規制するのか分からない。タブーのようになっている靖国神社の問題を考える機会になると思う」と評価した。

(時事ドットコム 2008/05/03-11:54)


「靖国」混乱なく初公開厳戒の中、客足好調

 右翼団体の抗議活動などで上映を中止する映画館が相次ぎ、一時は公開が危ぶまれた日中合作のドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓(リイン)監督)の初の一般上映が3日、東京の映画館「渋谷シネ・アミューズ」で始まった。

 映画館が入る建物の入り口には制服姿の警官が立ち、館内に私服警官の姿も見られた。スクリーンの横には上映中も警備員が客席を向いて座り警戒したが、映画館周辺に右翼団体の街宣車は姿を見せず混乱もなかった。

 客足は好調で、午前10時半から始まった初回上映の整理券は1時間前になくなり、午後2時半ごろには「本日完売」の案内も。

 神奈川県相模原市の男性会社員(26)は「メッセージ性は感じなかった。公平な立場でありのままに撮影しドキュメンタリーとして好感が持てる」と話した。

 同館の上映は9日までだが、10日以降に東京、大阪、広島、京都など約10館で順次公開されることが決まっている。

(2008/05/03 18:50 共同通信)

 


毎日新聞(毎日jp) http://mainichi.jp/
時事ドットコム http://www.jiji.com/
共同通信(47NEWS) http://www.47news.jp/